テレワークによる運動不足で免疫力が低下!? 免疫体操とビタミンで病気知らずに!

テレワークによる運動不足で免疫力が低下!? 免疫体操とビタミンで病気知らずに!

医学博士/
かわむらクリニック院長

川村 明 先生

(かわむら あきら)

1955年高知県生まれ。徳島大学医学部卒。1991年に山口県宇部市にかわむらクリニックを開業する。ヨガインストラクターの資格を取得して高齢者を対象とした「AKヨガ」を考案。ひざ裏を伸ばすという簡単なストレッチによって高い効果を発揮する運動指導が評判を呼び、あらゆる分野の医療や介護予防運動に活用される。出身地の高知県いの町では「壁ドン健幸特使」に任命され、寝たきりゼロを目指した地域活動にも従事。著書に『5秒ひざ裏のばしですべて解決』(主婦の友社)、『10歳体が若返る! 奇跡の寝たまま1分ストレッチ』(宝島社)などがあり、累計部数は70万部を超える。

長期間に及ぶコロナ禍でのテレワークから運動不足を感じていませんか? 実は運動不足による筋力や体力の低下は、血液やリンパ液の流れを悪くし、基礎代謝を下げてしまうことから免疫力の低下につながるといわれています。そこで今回は、「ひざ裏のばし」という独自の体操メソッドを考案し、テレビや雑誌といったさまざまなメディアで活躍するスーパードクターの川村明先生に、免疫力をアップさせる体操とあわせて摂りたいビタミンについて教えていただきました。

 運動不足が、 
 免疫力を低下させる 
 “負の連鎖”を引き起こす 

新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークでの働き方が浸透した結果、体を動かす機会が減り、運動不足を実感する人が増えたといわれています。事実、スポーツ庁もコロナ自粛による健康二次被害の拡大を防ごうと、運動やスポーツの実施・啓発に向けたリーフレットやガイドラインを作成するほど(※1)。こうした現状に川村先生は、「運動をしなければ、免疫力を低下させる“負の連鎖”が起きてしまう」と警笛を鳴らします。

「運動不足になると、筋力が衰えることから免疫細胞を体の隅々に届ける血液やリンパ液の巡りが悪くなり、体温の低下を引き起こします。一般的に基礎体温が1℃下がると免疫力は30%ダウンするといわれていて、体温が下がると基礎代謝も低下しますから体の働きそのものも落ちてしまうのです。

また長時間に及ぶテレワークでの姿勢の悪化は、血流を悪くして肩こりや腰痛を招くだけではなく、体幹自体を歪めてしまいます。すると、お腹周りのインナーマッスルが使われなくなることから腹圧が落ちて、腸に悪い影響を与えてしまうんですね。大腸と小腸には全身の免疫細胞の60〜70%が存在しているといわれていますから、免疫機能へ及ぼす悪影響は言うまでもありません」(川村先生)

そして、もっとも深刻なのは自律神経への影響だと川村先生は語ります。先生が専門とする東洋医学の世界には「血の巡りは気の巡り」という格言があり、運動不足や歪んだ姿勢による血流の悪化は免疫と密接な関係にある自律神経のバランスも大きく崩してしまうと言うのです。

※1 スポーツ庁 新型コロナウイルス感染対策
スポーツ・運動の留意点と、運動事例について

 免疫力アップの万能薬! 
 自宅で簡単にできる“免疫体操” 

では、テレワークによる運動不足や姿勢の悪化が引き起こす免疫機能の低下には、どのような対策を講じればいいのでしょうか? 川村先生は、体操こそがその最善策だと明言します。

「免疫力を高めるには、先ほど説明した血流・体温・腸・自律神経の4つの働きを正常な状態に戻してあげる必要があるわけですが、体操はそのすべてに効く“万能薬”といえます。体操やストレッチで筋肉を伸ばして柔軟にしてあげれば、血流やリンパ液の流れが改善され、体温の上昇も期待できますし、体幹筋が強くなることから腹圧が高まり、内臓の血流もよくなって胃や腸の働きも整います。そして、何より体操やストレッチには副交感神経を優位にして体をリラックスさせる働きがあり、交感神経の緊張を和らげ、自律神経を整えてくれる効果があるのです」(川村先生)

そこで川村先生に教えていただいたのが、免疫機能を高めてくれる先生直伝の“免疫体操”です。コロナ禍の自粛生活でも自宅で簡単にでき、朝・昼・夜と1回ずつ、わずかな時間、体を動かすだけで効果があるといいます。運動不足を感じている人は、ぜひ日々の生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

<朝にやりたい体操>

壁ドンストレッチ

「これから1日がはじまるという朝一番は、下半身の筋肉を使って体温を上昇させ、ひざ裏の筋肉をのばすことで、下半身に滞りがちな血液を全身へ巡らせたいですね。肩甲骨を動かすことで、免疫力の低下につながるリンパの滞りも改善してくれます」(川村先生)

  • 1.

    壁に両手をついて足を前後に開きましょう。前足のひざを曲げ、後ろ足はかかとを床につけて、ひざ裏をしっかりとのばします。まっすぐ前を見て、深く息を吸いましょう。

  • 2.

    息を吐きながら腰に力を入れ、壁を5回押します。肩甲骨をしっかり動かし、かかとを浮かせずに行うのがポイントです。

  • 3.

    そして腰を内側に入れ込むようにして、壁をぐーっと押したまま5秒間キープします。ひざの裏とももの付け根、背中とひじをしっかりのばすことを意識しましょう。

前後の足を入れ替えて、もう一度繰り返します。

<昼にやりたい体操>

ワン・ツー・スリー体操

「午後の仕事が控えたお昼には、大きな声を出してモチベーションをアップさせましょう。座りっぱなしの姿勢で歪んでしまった骨盤も矯正できるので、下腹部に力が入りやすくなって腹圧も元に戻り、腰周りの血流がよくなることから内臓の働きもよくなります」(川村先生)

  • 1.

    つま先を外側に向けて足を大きく開き、お腹に力を入れた状態で立ちます。

  • 2.

    息を吐きながら腰をまっすぐ下におろします。息を吐き切ったら、「ワン・ツー・スリー」と大きな声を出して太ももを3回叩きましょう。

  • 3.

    今度は息を吸いながら腰を上げて、「ワン・ツー・スリー」と大きな声を出してお尻を3回叩きます。

1〜3を3回繰り返しましょう。

<夜にやりたい体操>

壁ピタドローイン

「1日の仕事を終えた夜には、スイッチがオンになったままの交感神経を落ち着かせます。胸を広げて深呼吸をし、副交感神経を優位にして自律神経を整えましょう。体幹筋も鍛えられることから腸の血流もよくなり、免疫機能の向上も期待できますよ」(川村先生)

  • 1.

    両肩と手のひら、お尻とかかとの4箇所を壁につけ、胸を大きく開いて息を深く吸います。その際、ひざは内側に寄せ、左右のかかとをつけてつま先を90度に開くことを意識しましょう。

  • 2.

    軽く息を吐き、手のひらを返して体に寄せます。お腹と内ももを締めながら再び息を吸い、5秒間キープします。

寝たままの状態で行うのもおすすめです。

 体操とセットで摂ると 
 相乗効果が 
 期待できるビタミンとは? 

加えて、川村先生は免疫体操とあわせて摂取したいビタミンについてもアドバイスしてくださいました。やはり免疫力を向上させるにはビタミンDの摂取がおすすめとのことでしたが、ビタミンDは腎臓の働きが悪くなると、その効力を発揮するために必要となる「活性型ビタミンD」という物質がうまく作れなくなり、場合によっては、過剰摂取の副作用から腎臓を傷めてしまう危険性もあるといいます。

ところが、川村先生の提唱する体操には血流をよくする働きがあることから、腎臓への血流もよくなり、ビタミンDの効用の鍵を握る腎機能も高めることができると川村先生は語ります。つまり、体操とセットでビタミンDを摂ると、ビタミンDの効能をよりいっそう高め、副作用を抑える効果が期待できるというわけです。

また、先生が個人的に摂取を心がけているビタミンは、抗酸化作用のある(老化の原因となる活性酸素から体を守ってくれる)ビタミンCだと教えてくれました。体内に侵入したウイルスや細菌と戦う白血球やリンパ球に働きかけ、免疫機能を強化し、病気への抵抗力が高めてくれるからビタミンDとあわせておすすめとのことでした。

まとめ

新型コロナウイルスから身を守るための自粛も、免疫力を下げて感染リスクを高めてしまっていたら本末転倒です。川村先生直伝の免疫体操とビタミンで、病気知らずの体を手に入れてみませんか。