ビタミンで力強くよみがえる!50歳を過ぎても“現役”であり続ける秘訣とは?

ビタミンで力強くよみがえる!50歳を過ぎても“現役”であり続ける秘訣とは?

医師/
日本機能性医学研究所所長

斎藤 糧三 先生

(さいとう りょうぞう)

1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年に機能性医学の普及と研究を推進するため、日本機能性医学研究所を設立。
著書に「慢性病を根本から治す『機能性医学』の考え方」(光文社新書)、「糖質制限+肉食でケトン体回路を回し健康的に痩せる!ケトジェニックダイエット」(講談社)、「病気を遠ざける! 1日1回日光浴日本人は知らないビタミンDの実力」(講談社+α新書)など。

「人生100年時代」といわれる現代、できる限り“現役”であり続けたいと願う人は多いのではないでしょうか。ところが、年齢を重ねると心配になるのが、免疫機能の低下です。これまでは風邪なんて引いたこともなかったという人が、50歳を過ぎたあたりから病気がちに……ということも。そこで今回は、日本における機能性医学の第一人者である斎藤糧三先生に、老化が免疫機能へもたらす影響や、その対策法について話をお聞きしました。

 加齢により免疫機能が 
 低下するメカニズム 

会社での地位も安定し、大変だった子育ても一段落。そんな50歳を過ぎた今だからこそ、スポーツや旅行などの趣味に打ち込みたい。そう考える大人は少なくないはずです。ただ、人間の体は年齢を重ねるにつれ、着実に老化が進んでいくもの。視力や聴力などの機能だけでなく、人体の健康をつかさどる免疫機能も次第に衰えていき、40代ではピーク時の50%、70代では10%にまで落ち込むとも言われています。20代のころよりも病気にかかりやすくなったとか、ひとたび風邪を拗らせると治りにくくなったと感じる人はいませんか。それらは、いずれも免疫機能の低下が原因です。

では、こうした免疫機能の老化はどのようなメカニズムで引き起こされるのでしょうか? これまでは胸腺で作られているT細胞というリンパ球の一種が、老化にともなう胸腺の急激な萎縮によって新しく供給されなくなり、機能低下を引き起こすと考えられていました。ところが、最新の免疫研究ではもっと新しい見解が得られていると斎藤先生は語ります。

「近年の研究によると、免疫老化の原因はT細胞の一部が加齢によって不良化し、増殖してしまうことにあるとわかってきました。通常、T細胞はウイルスや細菌などの外敵に反応して増殖し、それらを排除しようと働きかけますが、この不良化したT細胞にはこうした免疫機能のほとんどがありません。その代わりに、マクロファージなどの免疫細胞が作るオステオポンチンという強力な炎症性サイトカインを大量に産生し、がんの増殖や転移なども促進してしまうのです」(斎藤先生)

また、斎藤先生によれば、細胞の活動エネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)を合成し、“細胞の発電所”のような役目を担っているミトコンドリアの働きが悪くなることも、免疫機能を低下させる原因だと考えられるそうです。

「ミトコンドリアは免疫反応全体のバランスをとる司令塔として、免疫機能の維持に重要な働きをしていますが、年を重ねるとその働きが悪くなり、供給量も減ることで免疫細胞の質も低下します。また、老化によりミトコンドリアの遺伝子が損傷すると、悪性の活性酵素を大量に生産するとともに、細胞内に蓄積されることから慢性炎症を引き起こすことも近年の研究からわかってきました。これにより、体のさまざまな機能に悪影響が及びます」(斎藤先生)

 免疫機能の衰えは、 
 さまざまな病気の原因に! 

こうした免疫機能の老化が、私たちの体に与える影響は計り知れません。もっともよくみられるのは、体内に侵入してきた細菌やウイルスを外敵と判断する能力が衰え、攻撃力が弱まること。それにより、インフルエンザをはじめとする感染症にかかりやすくなったり、さらには一度かかった病気が治りにくくなるなどの症状が現れると斎藤先生は説明します。

また、免疫のブレーキシステムである制御性T細胞(Tレグ)の機能が低下することで、炎症反応を制御できなくなり、慢性炎症を引き起こしてしまうことも免疫老化ならではの弊害だそう。

「慢性炎症は、肥満や糖尿病などの生活習慣病からガン、リウマチなどの自己免疫疾患から脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化症、さらにはアルツハイマーやパーキンソン病などの神経性の疾患まで、あらゆる病気の原因になると言われています。神経系や免疫系、内分泌系などの生理機能も低下させることから、筋力が衰え、疲れやすくなったり、心身の活力が低下する、いわゆるフレイル(加齢にともなう虚弱)にも陥りやすい」と、斎藤先生は指摘します。

 ビタミンと生活習慣が鍵を握る! 
 免疫老化の防衛策 

では、免疫機能の老化を防ぐには、どのような対策をすればいいのでしょうか? 斎藤先生は、摂取したい栄養素と身につけたい生活習慣という2つの観点からアドバイスをしてくれました。

<摂取したい栄養素>

免疫力を保ち続けるには、ビタミンDやビタミンAといった免疫機能に直接働きかける栄養素が重要な役割を担います。ただ、すべてを食事から摂ることは難しいため、手軽なサプリメントを活用するのもおすすめとのことでした。

1. ビタミンD

ビタミンDには、細菌やウイルスといった外敵の侵入を皮膚や粘膜で防いでくれる抗菌ペプチド「ディフェンシン」の分泌を促進し、免疫機能を調整する働きがあります。老化による免疫機能の低下を防ぎ、健康を維持するために大事な栄養素です。

摂取量の目安:1日あたり50μg〜100μg

2. ビタミンA

ビタミンAには、外から入ってきた細菌やウイルスなどの外敵にくっついて、細胞への侵入を防いでくれる「IgA」という抗体を作る働きがあります。粘膜上皮細胞の維持や新陳代謝の作用を担っているので、免疫機能を強化するためには欠かせません。

摂取量の目安:1日あたり1200μg〜3000μg

3. 亜鉛

免疫細胞の原料となり、抗体を産生するために必要となる重要な栄養素です。ビタミンAとともに亜鉛が細胞の代謝を促すことによって、免疫細胞が活性化され、免疫力を上げる効果が期待できます。

摂取量の目安:1日あたり15〜60mg

4. 還元型コエンザイムQ10

コエンザイムQ10には、先述のミトコンドリアのエネルギー生産を活発にして、元気な状態に保つ働きがあります。また、老化の原因となる活性酵素の働きを抑える抗酸化作用も見逃せません。酸化型と還元型の2種類が存在しますが、より効果の高い還元型を選ぶことが大切です。

摂取量の目安:1日あたり100mg

<身につけたい生活習慣>

近年の研究で、「NAD(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)」と呼ばれる補酵素が免疫機能の維持に役立つことがわかってきました。ところが、この「NAD」は加齢とともに減少してしまうそう。でも、次の習慣を身につけることで回復させることができるといいます。

1. 摂取カロリーを抑えた、
バランスのよい食事

暴飲暴食を慎み、摂取カロリーを通常の70〜80%に制限した食事を心がけましょう。ポイントは、主食・主菜・副菜を揃えて、多くの栄養素をバランスよく摂るようにすること。1日の摂取エネルギーのほとんどは主食から摂るため、主食でのカロリー調節が効果的です。

オススメ食材:玄米(タンパク質)、納豆、味噌(発酵食品)

2. ストレスを発散させる、適度な運動

ストレスの増加は交感神経を優位にし、血管を収縮させてしまいます。その結果、血流が悪くなり、必要な栄養素が体内を巡りにくくなることから、免疫機能を低下させる原因に。ウォーキングや軽いジョギングなどの適度な運動は、ストレスを発散させ、血流をよくして免疫細胞の働きを活発にすることから、体の中のさまざまな機能を高めてくれます。

3. 体内時計を整える、規則正しい睡眠

慌ただしい毎日を過ごす現代人は生活リズムが狂いやすく、つい睡眠を疎かにしてしまいがちです。しかし、体内時計の乱れは免疫老化を促進させると斎藤先生は指摘します。睡眠時間は8時間ほど取るように心がけ、朝に起きたら明るい太陽の光を浴び、夜間はスマートフォンのブルーライトを見過ぎないように注意しましょう。

いつまでも元気で健康的な毎日を過ごすためには、体への気配りが欠かせません。手軽なサプリメントで必要な栄養素を摂取しながら生活リズムを整え、若さのキープに欠かせない免疫機能を維持していきたいものですね。