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プロフィール
スティーブ・ソレイシィ
(Steve Soresi)
1968年生まれ。アメリカ、ワシントンD.C.出身。早稲田大学大学院政治研究科修了。1990年来日。岐阜県の学校で英語指導助手を務める。「外国人のための日本語弁論大会」で優勝して以来、テレビほかで活躍。NHK教育テレビ「スティーブ・ソレイシィのはじめよう英会話」などで人気を博す。現在は、東洋英和女学院大学で教鞭をとる。日本で開発したスピーキングの育成メソッド(SPM)の研究において、2005年度フロリダ州TESOL(英語教育学会)によるPaper of the Yearを獲得。
書籍
スティーブ・ソレイシィのトッピング英会話
スティーブ・ソレイシィの
トッピング英会話

¥1,890(税込)
ルールばかり教えられたけど、どれが本当に重要なものなのかってことはわからなかった。
1990年に初めて来日し、岐阜県の学校で英語指導助手を務められました。
アメリカで多少なりとも日本語を勉強していらしたのですか?
いいえ。日本に来てから、いろんな人と話したりTVを観たりしながら習得したんです。もしアメリカで日本語を勉強していたら、「は」と「が」の違いとか、漢字の書き順とか、きっと嫌になっていたと思います。日本に興味を持ったのは、「もしも外国語学習に少しでも才能を持っていたら、日本に行ったほうがいい」という大学教授の一言があったからです。日本語は世界一難しい、そして日本は世界一の経済力があるからと。不況を知らない日本、そんなバブルの時代でした。来て3年目にバブルがはじけるんですけどね。
大学を卒業したら、NBCのニュースレポーターになるつもりでしたが、教授の言葉に刺激され、今しかできないと思って、とりあえず1年の予定で来日しました。それなのに、日本が大好きになってもう15年以上になります。日本語は、日本の「に」、あひるの「あ」も知らなかったけれど、私は私なりの勉強法で話したり書いたり読んだりできるようになりました。そのこともたぶんこの国が好きになった理由の一つだと思います。
大学時代には第二外国語にイタリア語を選び、イタリア系アメリカ人としてのアイデンティティを確かなものにしようと思いました。イタリアに留学もしました。そのときに、自分なりの語学勉強法とか、言語に対する見方というものが身についたように思います。
つまり、学校で教わるような硬い勉強と違って、何が重要で何が重要でないのかということがわかってきて、こういうふうにすれば言語の習得ができるということを実感したのです。日本の英語学校も同じですが、必ずおさえておかなければならない基本的な事項と、少しレベルアップしたそれほど優先度の高くない事項をいっしょくたに紹介していて、どれがホントに重要なのか、どれが重要じゃないのかがわからない。こう言ったらこういう意味になる、これはこういうふうに組み合わせないとダメとかルールばかり教えられたけど、どれが本当に重要なものなのかってことはわからなかった。
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日本人はYes/Noだけでちゃんと応えたと勘違いしている人が多いので、要注意です。
そういう苦労が、今回の『トッピング英会話』に生かされる。
この本で一番伝えたいことは、実際的なコミュニケーションです。最初私は、日本人が英語でのコミュニケーションが苦手なのは、失敗を恐れているからだと思っていました。
これが悪いのだと思っていたんです。だから「失敗、恐れないで」と励ましていました。今は考え方が違います。日本人は中途半端な英語を話したくないんです。カッコいい英語、すばらしいきれいな英語を話そうとする、そのこだわりは悪くないと思います。でも、たぶん日本人の多くが、何がきちんとした英語で、何が中途半端な英語かということに関して勘違いをしているんです。
例えば、「昨日よく眠れましたか?」と聞くとします。
 Did you sleep well last night?
 その答えは Yes, I did. またはNo, I didn't.
一見正しいように見えますが、実はこれは正しい英語とは言えないんですよね。
学校のテストの答案だったら?
テストの答案ならOKです。だけど、この本は中学生や高校生が試験でいい点数をとるための本じゃないんです。実際の会話の場では、こういう受け答えでは失敗だと思ってほしい。そこにプラス1、つまりトッピングをつけなかったら、それは未完成な受け答えだ、そういう概念を身につけてもらうのが本書の狙いです。
会話として未完成ってことですね?
そうですね。会話でもEメールでもそうだと思います。例えば「今度の原稿の締め切りは3月30日ですよね?」と言ったり、書いたりするとします。それに対して、「はい、そうです」だけでもOKかもしれないけど、実際には「はい、そうです。楽しみにお待ちしています」とか、「はい、そうです。間に合いそうですか」とか、普通は何か付け加えるでしょう? それが生きた会話の基本というものですよね。この付け加え=トッピングの法則は、英語に限りません。ユニバーサルな基準と言っていいでしょう。日本人はYes/Noだけでちゃんと答えたと勘違いしている人が多いので、要注意です。
SPMという独自のメソッドを提唱していらっしゃいますが、それと同じですか?
SPMは、Sentences Per Minute の略。ある一定の時間内にどれくらい文章を発話するか、という考え方です。1分間に10から20センテンスを話すのが望ましい。世界の人々は大体これくらいの発話率で英語を話しています。だからそれ以上だと早口すぎるし、それ以下だと間延びした印象になります。
面白いことに、「あの人は英語ができる」という印象を与える人が何をやっているかというと、実はその人は2つの法則にのっとって話しているだけなんです。1つは相手の問いに答えるとき必ずトッピングを付け加えるという法則。つまり、Yes/Noの一言で会話を終わらせていません。2つ目は10〜20のSPM。ある程度の量の文をノーマルなスピードで話すという法則です。それだけで、とても流暢な英語を話しているように聞こえます。ところがいざふたを開けてみると「なーんだ、簡単なことしか言ってないじゃん」となるわけです。でも、とっさにそれができなくて、Yes/No で終わってしまっている人は多いですよね。
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ライフスタイルのなかにいかに英語を取り込めるか、というのが上達のポイントだと思います。
では、トッピングやSPMを実践するにはどうしたらいいのでしょう?
 たとえば海外旅行に行くと「どこから来たの?」とか「仕事は何をしているの?」とかは、よく聞かれますよね。中国人や韓国人と間違えられることもよくあるでしょう。日本にいるときでも、道を聞かれたり、映画館などで隣の席が空いているか聞かれたりという場面はありそうです。こういう場面こそチャンスです。まずはこういう、よくあるメジャーなシーンにフォーカスして、そこでの受け答えの仕方からスタートしていけばいい。本書の狙いはまさにそこなのです。まずは Where are you from? や What do you do? のような、よくある質問にどう答えるかということから始めればいいと思います。そしてYes/Noだけではなく、自分なりのトッピングを付け足せるかどうか。本書ではそのための参考例をたくさん紹介しました。それも “日本人だったらたぶんこういうことを言いたいだろうな”というような視点で選んだつもりです。「おかげさまで」とか「とんでもありません」とか、日本人が言いたそうな表現を集めたというのが今回の本の特徴です。私は15年以上日本にいますので、日本らしい表現をたくさん知ることができました。本書ではそれを生かせたと思っています。
そして世界的な視点から見て、日本人の英語の問題点を考えてみると、それは発音とか文法とかではないと思っています。日本人の一番の問題点、それは料理に例えるなら、キッチンから「出てこない」こと。味が薄いとかまずいとかじゃなくて「出てこない」。ようやく出てきてくれたと思ったら、今度は量が極端に少ない。
ポイントはトッピング?
そうですね。Yes/Noだけでは未完成で中途半端。Yes/Noだけではなくそこに何か一言、簡単なプラス1を付け加えてトッピングするだけで完成品になります。
それから、皆さんが「既に知っている言葉を使う」というのがトッピングするときのポイントかもしれません。知っている言葉をもう一回り大きいものにするために、例えば「“Nice to meet you.”が言えるなら、“It's”を付けたほうが丁寧です」とか。こういうアドバイスは解説欄に詳しく盛り込みましたので、丸暗記しちゃっていいと思います。
先方が言ったことを聞き取れるかどうかという問題もあります。
最初は聞き取れないと覚悟したほうがいいでしょう。長年頑張って英語を勉強している人は、聞き取れないとものすごい劣等感を覚えるんですよね。でもネイティブ同士だって聞き取れないことはあります。そこでイントロダクションに、「応対に必要な救命道具!!」として、聞き取れないときの即戦力になるパターンをあげました。
聞き取り能力を高めるための私からのアドバイスは、自分の得意表現をどんどん増やすということ。よくどちらが先かというけれど、とっさに文章を組み立てる力があればあるほどリスニング能力も高まってきます。私が日本語を習得してきたときもそうでした。
もう一つのアプローチとして、「多聴」という方法も浸透してきていますよね。読解力を高めるのに「多読」が有効であるのと同じです。
私は今でも、日本のテレビを録画して何時間も見ています。好きなジャンル、自分のレベルに合うもの、興味のある番組などなど。これもまた国民性のおもしろいところで、日本人はものすごく忍耐力があるんですよね。私みたいに飽きっぽくないから、つまらないと思っても、律儀に最後まで観たり聴いたりするでしょ?でも、たいていは頭に残ってないですよね。つまらなかったら次にいけばいい。教材はいくらでもあります。それくらいわがままに勉強してください。インターネットもあればDVDもあり、ラジオやテレビを合わせると何十時間もの英語が日常的に流れている中で、なにも自分のレベルに合わないものや興味のないものを読んだり聴いたりする必要はないんです。自分の好きなものや自分に合うものを見つけて、ライフスタイルのなかにいかに英語を取り込めるか、というのが上達のポイントだと思います。
スティーブさんの本の特徴として、日本人ならではの表現を英語にしてくれていたり、言ってみたくなるようなジョークがたくさんあったりしますよね。
楽しさは、学習を長く続ける何よりの秘訣ですよね。それから私は良いユーモアの言葉は簡単な言葉から成り立っていると思っています。トッピングするときはジョークを使うチャンスでもありますよ。皆さんがこの本をヒントに実際の会話をより楽しんでくれたら嬉しいです。CDも付いていますので、是非聴いて下さいね。

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